コラム
2025.12.26
飲食店経営の基本「QSCA」とは?売上を伸ばす4つの要素と具体的なチェックリスト
- 基礎情報
「美味しい料理を出しているのに、なぜかリピーターが増えない」
「集客に力を入れているのに、売上が安定しない」
飲食店を経営する中で、このような悩みを抱えていませんか?実は、繁盛店とそうでない店舗の決定的な違いは、派手な宣伝や流行のメニューではないのです。そこで大切と言われているのが、「QSCA」です。
QSCAとは、Quality(品質)、Service(接客)、Cleanliness(清潔さ)、Atmosphere(雰囲気)の頭文字を取ったもので、顧客満足度を高めるために必要となる要素です。この4つが満たされていないと、どんなに素晴らしい販促を行っても「穴の空いたバケツ」のように顧客が流れていってしまいます。
本記事では、QSCAの正確な定義から、なぜこれらが売上に直結するのかという理由、そして明日から店舗で使える具体的なチェックリストと改善策までを徹底解説します。基本を見直し、長く愛される店舗を作るためのヒントとしてご活用ください。
QSCAとは?
上記でも説明したように、「QSCA」とは、飲食店経営の基本原則である「QSC」に「Atmosphere(雰囲気)」を加えた造語です。「Quality(品質)」「Service(接客)」「Cleanliness(清潔さ)」「Atmosphere(雰囲気)」の4つの頭文字で構成されています。これらは飲食店運営において、顧客満足度(CS)を高めるために欠かせない要素です。
▼QSCAの4要素と概要
| 要素 | 意味 | 顧客視点のチェックポイント |
| Q:Quality | 品質 | 料理は美味しいか、適温か、安全か |
| S:Service | 接客 | 気持ちの良い挨拶や気配りがあるか |
| C:Cleanliness | 清潔さ | 店内やトイレ、スタッフの身だしなみは清潔か |
| A:Atmosphere | 雰囲気 | 店内の居心地が良いか、BGMの音量は適切か |
どんなに美味しい料理を提供しても、店内が汚かったり接客が悪かったりすれば、お客さまは定着しません。4つの要素をバランスよく高い水準で維持することが、繁盛店を作る条件です。ここでは、各要素の具体的な内容を解説します。
Quality(品質)
Qualityは、提供する料理やドリンクの「品質」そのものを指します。単に味が美味しいだけでなく、適切な温度管理、メニュー写真通りの盛り付け、食の安全性が含まれます。
特に重要となるのが「期待値との整合性」です。例えば、メニュー写真ではボリュームがあるのに実物が少なければ、お客さまは失望します。また、熱い料理がぬるい状態で提供されれば、品質が低いと判断されます。
したがって、常に一定のクオリティを維持するためのレシピ管理や、調理手順の順守が不可欠です。お客さまが支払う費用に見合うか、あるいはそれ以上の価値を提供できているか、が評価の基準となります。
Service(接客)
Serviceは、従業員による「接客」やおもてなし全般を指します。入店時の挨拶から、注文の受け答え、料理提供時の説明、会計、退店時の見送りまでの一連の対応が含まれます。
正しい敬語や丁寧な言葉遣いは基本ですが、それ以上に「ホスピタリティ」が重要です。お客さまの目を見て笑顔で対応する、空いたグラスに気づいて声をかけるなど、相手の立場に立った気配りが求められます。
マニュアル通りの機械的な対応ではなく、状況に応じた柔軟なサービスが顧客満足度を大きく左右します。心地よい接客は、料理の味以上に「また来たい」と思わせる動機になります。
Cleanliness(清潔さ)
Cleanlinessは、店舗内外の「清潔さ」と「衛生管理」のことです。QSCAの中で最も優先順位が高く、不潔な印象を一度でも与えてしまうと致命的な客離れの原因になります。
チェックすべき範囲は客席だけではありません。トイレの清掃状況、床の隅のホコリ、カトラリーの汚れ、従業員の制服や髪型などの身だしなみまで幅広いです。
また、見えない部分である厨房の衛生管理も大変重要です。整理整頓が行き届いていない厨房は、異物混入や食中毒のリスクを高めます。「飲食店は清潔であって当たり前」という厳しい目線で見られていることを意識し、徹底した清掃習慣を定着させる必要があります。
Atmosphere(雰囲気)
Atmosphereは、店舗全体が醸し出す「雰囲気」や「居心地の良さ」を指します。QSCの3要素にこのAを加えることで、単なる食事の提供場所ではなく、体験価値を提供する空間としての魅力が高まります。
具体的な構成要素は、内装デザイン、照明の明るさ、BGMの選曲と音量、空調の温度、そして店内の香りなどです。これらが店舗のコンセプトと一致していることが重要です。
ターゲット層や利用シーンに合わせた空間演出を行い、お客さまがリラックスして過ごせる環境を整えることが、QSCAの完成度を高めます。
飲食店にQSCAが必要な理由
新規客を「常連客(リピーター)」に変える信頼の土台になる
新規客をリピーターへ育てるためには、QSCAを改善し、「また来たい」と思わせることが必要です。お客さまは料理の味だけでなく、衛生面や接客態度を含めた総合的な体験を評価して再来店を決めます。
実際に、料理が美味しくても、トイレが汚れていたりスタッフの態度が悪かったりすれば、次回の来店動機は失われます。不快な要素が一つでもあると、全体の評価が大きく下がるのです。
したがって、4つの要素すべてを平均点以上に保つことが重要です。「安心して利用できる」という信頼感が積み重なることで、お客さまは初めて「また来よう」と感じ、常連客になってくれるのです。
QSCAの乱れは「悪い口コミ」の原因になりかねない
QSCAの乱れは顧客満足度を下げるだけでなく、悪い口コミが拡散される原因になります。現代では、スマートフォンを通じてリアルな体験が即座に共有されるため、たった一度のミスが致命傷になりかねません。
「料理に髪の毛が入っていた」「店員から挨拶がない」「BGMがうるさすぎる」といったネガティブな情報は、良い評判よりも早く広く拡散します。一度ついた悪いイメージを払拭するには、多大な時間と労力が必要です。
そのため、日々の営業でQSCAを徹底することは、最大のリスク管理といえます。高い基準を維持し続けることが、悪評を防ぎ、ブランドの信頼を守る唯一の手段です。
QSCAチェックリストと改善のポイント

店舗の現状を客観的に把握するには、具体的なチェックリストを用いた点検が有効です。「なんとなく頑張る」のではなく、評価基準を明確にすることで、改善すべきポイントが見えてきます。ここでは、各要素における具体的なチェック項目と、即座に取り組める改善のアクションプランを解説します。
【Qの改善】料理は「メニュー写真通り」かつ「適温」で出せているか
料理の品質(Quality)において最も重要なのは、お客さまの期待を裏切らないことです。メニュー写真と実物に差があると、「詐欺だ」と感じさせてしまいます。また料理の温度管理も味の一部であり、熱いものは熱く、冷たいものは冷たい状態で提供することが鉄則です。
盛り付けの崩れがないかや、ソースの汚れが皿の縁についていないかといった細部も品質に含まれます。キッチンとホールが連携し、料理が完成してからお客さまのテーブルに届くまでの時間を短縮することが、適温提供の鍵となります。
■ Q(品質)チェックリスト
・盛り付けやボリュームはメニュー写真と一致しているか
・料理は適切な温度(熱い・冷たい)で提供されているか
・皿の縁に指紋やソース汚れが付着していないか
・食材の鮮度は基準を満たしているか
・提供時間は標準タイム内(例:ドリンク3分、料理10分)か
【Sの改善】流れ作業ではなく、ホスピタリティを持ち接客しているか
接客(Service)は、流れ作業や「ながら」で行うのはNGです。目を見ずに言葉だけ発する挨拶や、雑な料理提供は、むしろ事務的で冷たい印象を与えてしまいます。また、スタッフ同士の私語はお客さまに筒抜けであることを認識し、業務に関係のない会話は控えるよう指導します。
■ S(接客)チェックリスト
入退店時に作業の手を止め、目を見て挨拶しているか
笑顔で明るいトーンの声出しができているか
お冷やの注ぎ足しや空いた皿のバッシングは自発的か
言葉遣いは正しく、馴れ馴れしくなっていないか
スタッフ同士の私語が客席に聞こえていないか
【Cの改善】トイレの鏡や床の隅まで「1日複数回」チェックしているか
清潔さ(Cleanliness)は、開店前だけでなく、営業中も高い頻度で維持しなければなりません。特にトイレは汚れやすく、店舗の衛生意識が最も現れる場所です。鏡の水ハネ、トイレットペーパーの補充、床の隅のゴミなどは、1日に複数回チェックして清潔な状態を保つ必要があります。
具体的な改善策として、トイレ掃除のチェック表を設置し、1時間ごとの巡回をルーティーン化します。また、客席の下に落ちているナプキンや食べこぼしにも目を光らせます。お客さまが入れ替わるタイミングで、テーブルの上だけでなく、椅子や床もセットで清掃する習慣をつけましょう。
■ C(清潔さ)チェックリスト
・トイレの鏡、手洗い場、便座は清潔か(1時間に1回確認)
・床の四隅やテーブルの下にゴミやホコリがないか
・メニューブックやカスターセット(調味料)はベタついていないか
・従業員の制服や爪、髪型は清潔感があるか
・グラスやカトラリーに水垢や曇りがないか
【Aの改善】BGMの音量や照明は「時間帯・客層」に合わせて調整しているか
雰囲気(Atmosphere)作りでは、時間帯や客層の変化に応じた微調整が求められます。ランチタイムは明るい照明と軽快なBGMで回転率を意識し、ディナータイムは照明を落としてゆったりとしたBGMでくつろぎを演出するなど、客層やシーンに合わせた空間演出が必要です。
店内の環境は常に変化しています。満席時と空席時では、必要な空調の強さが異なったりもします。設定を固定するのではなく、実際の店内の状況を見て、「少し暑くないか」「音楽が大きすぎないか」を肌感覚で確認し、柔軟に調整を行ってください。
■ A(雰囲気)チェックリスト
・BGMの音量は会話の妨げになっていないか
・照明の明るさは店舗・時間帯(昼・夜)に適しているか
・空調の温度は快適か(直風が当たっていないか)
・店内に不快な臭い(排水溝や油の臭い)がしていないか
・内装やディスプレイは店舗のコンセプトと合っているか
QSCAを店舗に浸透させる教育・マネジメント術

QSCAを一時的なキャンペーンで終わらせず、店舗の文化として定着させるには、教育と仕組み化が必要です。スタッフの個人の能力に頼るのではなく、誰が働いても一定の品質を維持できる体制を整えます。ここでは、具体的なマネジメント手法を解説します。
主観を排した具体的な「行動基準」を作る
スタッフ指導において最も重要なのは、「きれいにする」「丁寧に接客する」といった主観的な言葉を排除することです。人によって「きれい」や「丁寧」の基準は異なるため、具体的な数値や行動で示した基準を設ける必要があります。
以下の表は、主観的な指示を具体的な行動基準に変換した例です。
▼主観的な指示と具体的な行動基準の比較
| 項目 | 曖昧な指示(NG例) | 具体的な行動基準(OK例) |
| テーブル清掃 | 「きれいに拭いて」 | 「アルコールを3回吹きかけ、 一方向に拭き上げ、 水滴を残さない」 |
| 挨拶 | 「元気よく」 | 「目が合ってから1秒以内に、 笑顔で『いらっしゃいませ』 と言う」 |
| 提供スピード | 「なるべく早く出して」 | 「ドリンクはオーダーから3分以内、料理は10分以内に 提供する」 |
このように行動基準を明確にすることで、スタッフは迷いなく動けるようになります。また、管理者側も「できている・できていない」を客観的に判断できるため、公平な評価と的確なフィードバックが可能になります。
「役割分担」と「優先順位」で品質を維持
ピークタイムにQSCが乱れる最大の原因は、役割分担の曖昧さです。全員がその場の判断で動くと、料理提供が遅れたり、バッシング(片付け)が放置されたりと、オペレーションが崩壊します。これを防ぐには、ポジションごとの役割と優先順位を明確に決めておくことが効果的です。
具体的には、「ドリンカーはドリンク作成を最優先し、オーダーテイクには出ない」「ホール担当は新規客の案内とオーダーを優先し、片付けは後回しにする」といったルールを設けます。それぞれの持ち場を守ることで、全体の流れがスムーズになります。
忙しい時こそ、「今、何が一番重要か」という優先順位の共有・連携が不可欠です。スタッフ全員が共通の判断基準を持つことで、混乱の中でも最低限守るべきQSCAのラインを維持できます。
まとめ:QSCAは一日にして成らず。日々の積み重ねが繁盛店を作る

本記事では、飲食店経営の成功に不可欠な「QSCA」の定義から、具体的な改善策、店舗への定着方法までを解説しました。
QSCAは、売上を劇的に上げる魔法ではありませんが、売上を上げる土台をつくります。どんなに素晴らしいコンセプトやマーケティング手法も、この4つの要素が欠けていれば効果を発揮しません。
今日からすぐにできることは、店舗の現状を客観的に見て、チェックすることです。まずは記載したチェックリストを参考に、自店に合わせた「QSCA評価シート」を作成し、スタッフ全員で現状の点数を確認してみましょう。その小さな一歩が、愛される繁盛店への確実な道のりとなります。
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