コラム
2025.12.24
インボイス制度とは?仕組みや影響、登録から書き方まで解説
- 基礎情報
インボイス制度とは
インボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)とは、2023年10月1日から開始された、消費税の仕入税額控除に関する新しいルールです。原則として、売り手が発行する「適格請求書(インボイス)」の保存がなければ、買い手は消費税の仕入税額控除を受けられなくなりました。
本制度の主な目的は、複数税率(8%と10%)の下で正確な税額を把握すること、そして消費者が事業者に支払った消費税の一部が納税されず、事業者の利益になってしまうことを防ぎ、課税の公平性を保つことにあります。
インボイスとして認められるには、従来の請求書に加え「登録番号」「適用税率」「税率ごとの消費税額」の記載が必須です。特に「登録番号」は、国税庁に登録された課税事業者のみに発行されます。 つまり、未登録の事業者はインボイスを発行できず、取引相手が仕入税額控除を行えない(税負担が増える)ことになるため、事業者にとって極めて重要な制度改正といえます。
売り手と買い手への影響
インボイス制度は、請求書を発行する「売り手」と受け取る「買い手」の双方に大きな変化をもたらします。法人・個人事業主・フリーランスを問わず、自身の立場における影響を正しく理解することが重要です。
本項では、売り手に求められる登録の判断と、買い手に生じる新たな税務処理の負担について、それぞれの視点から具体的に解説します。
【売り手】インボイス発行には「登録」が必要
売り手が適格請求書(インボイス)を発行するためには、税務署への登録申請が必要です。登録を受けて「適格請求書発行事業者」になると、消費税の申告・納税義務が生じます。これは、従来納税を免除されていた免税事業者にとって非常に大きな決断となります。 一方、登録を行わず免税事業者のままでいると、インボイスは発行できません。その結果、取引先である買い手は仕入税額控除ができずに税負担が増すため、取引の見直しや消費税分の値下げを求められる可能性があります。自身の事業方針と取引先との関係を考慮した慎重な判断が求められます。
【買い手】インボイスがないと「仕入税額控除」ができない
買い手にとって最大の影響は、原則としてインボイスの保存がなければ「仕入税額控除」が適用できない点です。 仕入税額控除とは、売上にかかる消費税額から、仕入れにかかった消費税額を差し引いて納税額を計算する仕組みです。インボイスがない場合、仕入れ時の税額を差し引けないため、結果として納税額が増加します。 具体例として、税込11,000円(うち消費税1,000円)の経費を支払ったケースで比較してみましょう。
| 項目 | インボイスあり | インボイスなし |
| 経費支払(税込) | 11,000円 | 11,000円 |
| うち消費税相当額 | 1,000円 | 1,000円 |
| 仕入税額控除 | 可能(-1,000円) | 不可(0円) |
| 実質負担額 | 10,000円 | 11,000円 |
このように、インボイスがない場合は消費税分(1,000円)を控除できず、自社で負担することになります。 ただし、制度開始から一定期間は、免税事業者からの仕入れであっても一定割合を控除できる「経過措置」が設けられています。実務上は、取引先がインボイス発行事業者かどうかを確認し、適切に経理処理を行うことが重要です。
インボイスの正しい書き方

適格請求書(インボイス)には、従来の区分記載請求書等と比べて厳格な記載要件が定められています。売り手が要件を満たした書類を作成しなければ、買い手は仕入税額控除を行えません。 なお、必要な記載事項が含まれていればフォーマットは問われず、納品書や領収書、レシートであってもインボイスとして認められます。ここでは、新たに追加された必須項目や間違いやすい計算ルールについて具体的に解説します。
今までの請求書に追加される「6つの項目」
適格請求書(インボイス)には、従来の区分記載請求書等と比べて厳格な記載要件が定められています。売り手が要件を満たした書類を作成しなければ、買い手は仕入税額控除を行えません。 なお、必要な記載事項が含まれていればフォーマットは問われず、納品書や領収書、レシートであってもインボイスとして認められます。ここでは、新たに追加された必須項目や間違いやすい計算ルールについて具体的に解説します。
今までの請求書に追加される「6つの項目」
適格請求書(インボイス)として認められるためには、従来の記載事項に加え、新たな情報の追加が必須です。以下の6項目がすべて網羅されているかご確認ください。
・適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
・税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
特に「登録番号」「適用税率」「税率ごとの消費税額」は、制度開始により義務化された重要項目です。これらに不備があるとインボイスとして機能しないため、システム設定やフォーマットの確認を徹底しましょう。
間違いやすい「端数処理(消費税計算)」のルール
消費税の端数処理には、「1つの適格請求書につき、税率ごとに1回のみ」という厳格なルールがあります。 個々の商品明細行ごとに消費税を計算し、その都度端数処理を行ってから合計する方法は認められていません(従来のやり方からの変更点として注意が必要です)。正しい計算手順は以下の通りです。
・税率ごとに税抜金額(または税込金額)を合計する
・合計額に税率(10%または8%)を掛ける
・その金額に対して端数処理(切り捨て、切り上げ、四捨五入)を行う
※端数処理の方法(切り捨て等)は任意ですが、計算のタイミングは固定されています。お使いの会計ソフトや請求書発行システムがこのルールに対応しているか、必ずご確認ください。
手書きでも大丈夫?記載要件を満たすポイント
インボイスはシステム発行に限らず、手書きの領収書や請求書でも有効です。様式に法的な定めはないため、前述の記載要件さえ満たしていれば、市販の領収書用紙や従来の請求書用紙を使用しても問題ありません。
ただし、手書きは記載漏れのリスクが高まる点に注意が必要です。特に「登録番号」や「税率ごとの消費税額」は既存の用紙に含まれていないことが多く、記入漏れが頻発します。登録番号のゴム印を活用したり、インボイス対応の領収書用紙へ切り替えたりするなど、ミスを防ぐ工夫を取り入れましょう。
小売・飲食店は「レシート(簡易インボイス)」で対応可能

スーパーやコンビニ、飲食店など、不特定多数の顧客に対して販売やサービス提供を行う事業者は、通常のインボイスに代えて「適格簡易請求書(簡易インボイス)」を交付できます。これにより、詳細な項目をすべて網羅した書類(請求書形式)を用意せずとも、要件を満たしたレシート等で代用が可能となります。 ここでは、簡易インボイスの定義やメリット、効率的な対応方法について解説します。
適格簡易請求書(簡易インボイス)とは?
適格簡易請求書(簡易インボイス)とは、記載事項の一部省略が認められた簡易版のインボイスです。 主に不特定多数の者と取引を行う以下の業種に限り、発行が許可されています。
・小売業(スーパー、コンビニなど)
・飲食店業(レストラン、カフェなど)
・タクシー業
・写真業
・駐車場業(コインパーキングなど)
通常のインボイスと簡易インボイスの主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 適格請求書(インボイス) | 適格簡易請求書(簡易インボイス) |
| 対象業者 | 全業種 | 小売、飲食、タクシー等 |
| 宛名の記載 | 必須 | 不要 |
| 消費税の記載 | 税率ごとの消費税額 | 適用税率か消費税額のいずれかでOK |
| 交付形式 | 請求書、納品書など | レシート、領収書など |
これらの業種では、顧客一人ひとりに正式な書類を作成することが実務上困難です。そのため、記載項目を簡素化したレシート等を交付することで、インボイスの交付義務を果たしたとみなされます。
宛名が不要になる等のメリット
簡易インボイスの最大の利点は、「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称(宛名)」の記載が不要な点です。通常のインボイスでは買い手の氏名・名称の記載が必須ですが、簡易インボイスではこれを省略できます。
宛名の省略が認められることで、現場のオペレーションには以下のようなメリットが生まれます。
・会計時に「宛名はどうしますか」と聞く必要がない
・宛名書きによるレジの混雑を回避できる
・書き間違いによるトラブルや再発行の手間がなくなる
特に混雑する時間帯において、お客様をお待たせすることなく、スムーズに要件を満たしたレシートをお渡しできる点は大きな強みです。
レシート対応のPOSレジなら手間なしで解決
インボイス対応を効率的に進めるには、制度に対応したPOSレジの活用が推奨されます。従来型のレジ(非対応機種)では、登録番号の印字機能がなかったり、複数税率の計算が正確にできなかったりするケースが多いためです。
手書きの領収書や、登録番号のゴム印で対応することも可能ですが、手間がかかる上に人的ミスの温床となります。 一方、インボイス対応済みのPOSレジであれば、必要な登録番号や税率ごとの消費税額が自動的にレシートへ印字されます。初期設定さえ済ませれば、スタッフが意識することなく正しい形式で発行できるため、業務負担の大幅な軽減につながります。
これからどうする?インボイス対応の具体的な3ステップ

インボイス制度への対応は、単に登録番号を取得して終わりではありません。社内システムの改修、業務フローの見直し、取引先との調整など、やるべきことは多岐にわたります。 何から手をつけるべきか迷わないよう、対応に必要なプロセスを3つのステップに整理しました。優先順位をつけて計画的に準備を進めましょう。
①課税事業者になるか判断し、登録申請を行う
最初のステップは、自社がインボイス発行事業者(課税事業者)になるかどうかの経営判断です。 現在、免税事業者の方は、登録申請をすることで消費税の申告・納税義務が新たに発生します。「納税による利益の減少」と「インボイスを発行できないことによる取引停止のリスク」を天秤にかけ、慎重に判断する必要があります。
登録を決めた場合は、納税地を所轄する税務署長へ登録申請書を提出します。申請は書面のほか、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用すればPCやスマホからオンラインで完結します。審査には一定の期間を要するため、事業への影響を考慮し、余裕を持ったスケジュールで申請を行いましょう。
②レジや会計ソフトをインボイス対応に見直す
次に、請求書や領収書を発行・管理するための設備やシステムを見直します。 既存のレジや販売管理システムが、登録番号の印字や端数処理の計算ルールに対応しているか確認が必要です。旧来のレジ(いわゆるガチャレジ)や、アップデートされていないオンプレミス型のソフトでは対応できない場合があります。
もし未対応であれば、以下のチェックポイントを参考に改修や買い替えを検討します。
・POSレジ:レシートに登録番号や税率ごとの内訳が印字できるか
・請求書発行システム:インボイスの必須項目を網羅したフォーマットがあるか
・会計ソフト:記帳時にインボイスの有無を識別・管理できるか
これらを点検し、クラウドサービスの導入など、業務効率化も兼ねた環境整備を行うのがおすすめです。
③取引先への通知と受領フロー(経費精算)の確認
最後に、取引先とのコミュニケーションと社内ルールの整備を行います。 「売り手」としては、取引先に対して自社の登録番号を通知し、請求書フォーマットの変更を伝えます。「買い手」としては、主要な仕入先がインボイス発行事業者かどうかを確認し、免税事業者がいる場合は今後の取引条件について協議が必要になることもあります。
また、社内の経費精算フローも見直しが不可欠です。従業員が立替払いをした際、受け取った領収書がインボイス(または簡易インボイス)の要件を満たしているか確認する手順を周知させましょう。
・登録番号の記載はあるか
・レシートを経理担当者へどう渡すか
・免税事業者からの購入時の処理方法
これらを明確にしておかないと、経理担当者の確認作業などの負担が激増するため、事前のマニュアル作成やルール周知が成功の鍵となります。
インボイス制度に関するよくある質問(Q&A)

制度の導入に伴い、経理担当者に限らず、現場の従業員や小規模事業者からも多くの疑問が寄せられています。 特に、日々の業務に直結する経費精算や少額取引の扱いは、誤った理解が後々のトラブルにつながりかねません。ここでは、頻繁に質問される2つのトピックについて解説します。
Q. 会社員(サラリーマン)の経費精算にも影響はある?
A. はい、会社員の経費精算にも大きく影響します。
会社が支払った経費について消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として、従業員が持ち帰る領収書やレシートが「適格請求書(インボイス)」の要件を満たしている必要があるためです。 もし登録番号のない領収書を精算した場合、会社はその分の消費税を控除できず、実質的なコスト負担が増加します。
具体的には、取引先との会食やタクシー移動、備品購入などの場面で注意が必要です。 例えばタクシー利用時には、乗車前にインボイス対応車両かを確認する、配車アプリで対応車両を指定する等の対策が有効です。企業によっては「登録番号のない領収書は経費精算しない」というルールを設けるケースもあるため、受け取ったレシートの内容を必ず確認する習慣をつけましょう。
Q. 1万円未満の少額取引ならインボイスは不要?
A. 事業者の規模(売上高)によって扱いが異なります。
原則として金額の大小に関わらずインボイスの保存が必要ですが、一定規模以下の事業者には「少額特例」という負担軽減措置が設けられています。
・対象事業者: 基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者
・特例内容: 税込1万円未満の課税仕入れであれば、インボイスの保存がなくても帳簿への記載のみで仕入税額控除が可能
・適用期間: 2023年10月1日~2029年9月30日
対象となる中小企業や個人事業主は、少額の消耗品費や交通費等について、期間内であれば従来通り帳簿保存のみで処理可能です。 一方で、基準期間の売上が1億円を超える大規模な事業者はこの特例の対象外です。そのため、たとえ数百円のボールペン1本の購入であっても、原則通りインボイスの保存が必須となります。
まとめ:インボイス制度を理解して業務を円滑に進めよう
本記事では、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の仕組みから、売り手・買い手双方の実務的な対応方法までを解説しました。 最後に、重要なポイントを改めておさらいします。
・制度の本質: 消費税の「正確な税率」と「登録番号」を把握・保存するためのルールである。
・原則: 買い手が「仕入税額控除」を受けるには、売り手が発行する適格請求書(インボイス)の保存が必須となる。
・特例: 小売・飲食店などは、宛名記載が不要な「適格簡易請求書(簡易インボイス/レシート)」で対応可能。
制度への対応は一見複雑ですが、インボイス対応済みのレジや会計システムを導入することで、業務負担は最小限に抑えられます。特に、手計算による消費税の誤差や、登録番号の記載漏れといった人的ミスは、ツールの活用により確実に防ぐことができます。
正しい知識と適切な環境整備は、税務リスクの回避だけでなく、取引先からの信頼獲得にも直結します。自社の状況に合わせた準備を計画的に進め、新ルール下での業務を円滑に進めていきましょう。
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