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コラム

2026.05.25

源泉所得税とは?飲食店オーナーが知るべき計算方法と納付の仕組み

  • 基礎情報

新しくアルバイトを雇った際や、個人にメニュー作成を依頼した際の税金の扱いに悩む飲食店経営者は多いです。源泉所得税とは、支払者が受給者の代わりに税金を差し引いて納める制度です。
本記事では、飲食店の現場で発生しやすい源泉徴収の具体例や計算方法を解説します。どの支払いからいくら差し引き、どう納めればいいかを完全に理解し、税務トラブルを防ぎましょう。
※なお、本記事で解説する源泉所得税の税率等には、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が含まれています。

【監修者情報】

安田 亮(やすだ りょう)
公認会計士・税理士・1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
HP:https://www.yasuda-cpa-office.com/

源泉所得税とは?わかりやすく解説

源泉所得税とは、給与や費用を支払う事業者が、あらかじめ一定の税金を差し引いて国に納める仕組みです。本来は所得を得た本人が納税すべきですが、国が確実かつ効率的な徴収を行うために設けられています。
例えば、アルバイトに給与を支払う場合、店舗側が税金を計算して天引きします。

源泉所得税と所得税の違い

源泉所得税は、所得税を分割して前払いするシステムです。両者は別の税金ではなく、徴収のタイミングと納付方法が異なるだけです。
個人が1年間の所得をまとめて申告して納めるのが所得税です。一方、事業者が支払いの都度、所得税の一部を天引きして納めるのが源泉所得税となります。
所得税:1年間の個人の所得全体にかかる税金で、本人が申告・納税する
源泉所得税:支払いの都度天引きされる、所得税の前払いシステム

飲食店で源泉徴収が必要になる主なケース

飲食店において源泉徴収が必要となるのは、主に「人」に対して支払いを行う場面です。外部への報酬支払いや、従業員の雇用形態によって判断基準が変わります。
具体的なケースを把握することで、店舗での徴収漏れを防げます。以下のケースに該当する場合は注意が必要です。
・アルバイトやパートへの毎月の給与支払い
・繁忙期に雇った日雇いヘルプスタッフへの給与
・個人のカメラマンへのチラシに掲載する写真の撮影費用の支払い

源泉所得税の対象となる支払いは?(飲食店向けの具体例)

源泉所得税の対象は、大きく分けて従業員への給与と、外部の個人への報酬です。源泉徴収の対象となる支払いと、対象とならない支払いのルールを正しく理解し、徴収ミスを防ぐ必要があります。

アルバイト・パート・正社員への「給与・賞与」

従業員への給与や賞与は、雇用形態に関わらず、原則として源泉徴収の対象となります。(一定の非課税規定を除く)。
実際に、正社員はもちろん、パートやアルバイトであっても給与として支払う限り税金を引き去る必要があります。支給項目を正確に管理して計算漏れを防ぎましょう。

個人事業主(フリーランス)への「報酬・費用」

外部の個人事業主に特定の業務を依頼し、報酬を支払う場合も源泉徴収の対象となります。税法上、特定の人的役務の提供に対する報酬は徴収義務が定められているためです。
例えば、メニューのデザイン作成費用やコンサルタント料などが該当します。ただし、相手が法人の場合は原則として源泉徴収は不要です。発注先が個人か法人かを確認してください。

源泉所得税の対象外(非課税)となる交通費など

給与として支払うお金の中でも、一定の要件を満たす通勤手当や食事代(まかない)は所得税が非課税となります。生活に必要な費用や福利厚生とみなされるためです。
非課税分は源泉徴収の対象額から除外して計算します。
通勤手当:月額15万円までは非課税
まかない:従業員が食事代の半分以上を負担し、店舗側の負担が月額7,500円(税抜)以下の場合は非課税

出典:No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当|国税庁
出典:No.2594 食事を支給したとき|国税庁

源泉所得税の計算方法を支払い別に解説

木製ブロックを使った税金(TAX)のコンセプトイメージ

源泉所得税の計算方法は、対象が「給与」か「報酬」かによって全く異なります。対象ごとに正しい計算式を用いないと、徴収額に過不足が生じます。

給与・賞与の計算方法(源泉徴収税額表の使い方)

給与の源泉徴収税額は、国税庁が発行する「給与所得の源泉徴収税額表」を用いて算出します。社会保険料を差し引いた後の給与額と、扶養親族の数をもとに該当する金額を抽出します。
従業員から「扶養控除等申告書」が提出されている場合は税負担が軽い「甲欄」を適用します。未提出や副業の場合は税率が高い「乙欄」を適用して正しく計算してください。

報酬・外注費の計算方法(10.21%の計算式)

個人のデザイナー等への報酬は、支払金額に10.21%(100万円超の部分は20.42%)を掛けて算出します(1回に支払う金額が100万円以下の部分には10.21%が、100万円を超える部分に対しては20.42%が適用されます)。
例えば、個人のデザイナーに税込11万円(うち消費税1万円)のデザイン作成費用を支払う場合を考えます。消費税額が明示されている場合、税抜金額を源泉徴収の対象とできるため、
100,000円×10.21%=10,210円が源泉徴収税額となります。
支払額から10,210円を差し引いた99,790円をデザイナーに振り込みます
出典:No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき|国税庁

源泉所得税の納付期限と「納期の特例」

源泉徴収した税金は、期限までに国へ納付する義務があります。期限を過ぎるとペナルティが発生するため、自店舗の状況に合わせた納付スケジュールを組むことが重要です。

原則の納付期限は「支払った月の翌月10日」

国税庁は、源泉所得税は原則として給与や報酬を支払った月の翌月10日までに納付します。例えば、5月25日に給与を支払った場合、納付期限は6月10日です。
国税庁のデータによると、令和6事務年度の源泉所得税等の実地調査では、2万1千件の違反が指摘され、404億円の追徴税額が発生しています。納付遅れは不納付加算税などのペナルティの対象となるため注意が必要です。
出典:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁
出典:令和6事務年度法人税等の調査事績の概要|国税庁

従業員10人未満の店舗なら「納期の特例」で年2回に

給与の支給人員が常時10人未満の店舗は、税務署に申請することで「納期の特例」を利用できます。毎月の納付業務を年2回(上半期分の源泉所得税を7月10日までと、下半期分の源泉所得税を1月20日まで)にまとめることができます。
なお、納期の特例を利用できるのは、給与・退職金から源泉徴収した所得税等と、税理士・弁護士・司法書士など一定の報酬から源泉徴収した所得税等に限られます。個人デザイナーへのデザイン料や原稿料など、納期の特例の対象外となる報酬については、原則どおり支払った月の翌月10日までに納付が必要です。毎月の事務負担の軽減につながるため、小規模な飲食店は活用を検討するとよいでしょう。事前に申請書を提出することで適用を受けられます。
出典:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁

源泉所得税の納付書の書き方と納付方法

税金を納付する際は、専用の納付書を作成する必要があります。正しい書き方と効率的な納付方法を把握し、スムーズに手続きを進めましょう。

納付書の書き方(給与・報酬ごとの記入例)

納付書は、給与所得用と報酬用の2種類に分かれています。税法上の所得区分が異なるため、対象となる支払いに合わせて用紙を使い分けなければなりません。
用紙を選んだら、支払った人員や支払額、税額を正確に記入します。
給与・退職所得等用:アルバイトの給与などから徴収した税金を納める際に使用
報酬・料金等用:個人事業主などに支払った報酬から徴収した税金を納める際に使用

窓口・e-Tax・クレジットカードによる納付方法の比較

納付方法は、金融機関の窓口、e-Tax(電子申告)、クレジットカードの3種類から選べます。店舗の運営状況に合わせて最適な方法を選択してください。
窓口納付:領収書がその場で発行されるが、平日に金融機関へ行く手間がかかる
e-Tax:職場や自宅からインターネットで即時納付でき、手間を大幅に省ける
クレジットカード:24時間決済可能でポイントも貯まるが、決済手数料が発生する

源泉所得税と年末調整・確定申告の関係

源泉徴収した税金はあくまで概算の前払いであり、年末に最終的な精算が必要です。飲食店側と外注先側で、それぞれ精算の手続きが異なります。

飲食店側が行う年末調整の役割

飲食店は、扶養控除等申告書を提出している従業員に対して年末調整を行います。1年間の正しい所得税額を計算し、毎月天引きした源泉所得税の合計額と突き合わせるためです。
計算の結果、引きすぎていた場合は従業員に還付し、不足していた場合は追加で徴収します。従業員の税負担を正確にするための重要な義務です。

外注先(個人事業主)は自身で確定申告を行う

業務を依頼した個人事業主に対しては、飲食店側で年末調整を行う必要はありません。外注先本人が確定申告を行い、自ら税金の精算を済ませるルールだからです。
なお、税法上受給者本人への交付義務はありませんが、1年間に支払った金額と税額を記載した「支払調書」を作成し、確定申告の参考資料として提供されることがあります。
(※本人に交付する控えには、マイナンバーを記載してはいけない点にご注意ください。)

源泉所得税のよくある質問(飲食店編)

問 Q&A

飲食店の源泉所得税の実務において、よく寄せられる疑問にお答えします。イレギュラーなケースにも正しく対応し、税務上のトラブルを未然に防ぎましょう。

源泉徴収を忘れた(しなかった)場合のペナルティは?

源泉徴収を忘れて報酬を支払ってしまった場合でも、店舗側には納税義務が残ります。自腹で国に税金を納付するか、後日相手から税金分を返金してもらう必要があります。
また、納付期限を過ぎると本来の税額に加えて不納付加算税や延滞税が課されるため注意してください。

日雇いアルバイトでも源泉徴収は必要?

1日単位で雇う日雇いアルバイトであっても、条件に該当する場合は源泉徴収が必要です。給与の額に応じて、税額表の「丙欄」を適用して計算する決まりになっています。
実際に計算する際、日額9,800円未満(※令和8年1月以降の新基準)の給与であれば源泉徴収は不要となります。継続して2ヶ月以上雇用する場合は、通常のアルバイトと同じ扱いになります。
※金額基準は年度により変更されるため、国税庁の最新の税額表をご確認ください。
出典:給与所得の源泉徴収税額表(日額表)|国税庁

源泉所得税などの事務作業を減らし、飲食店の売上アップをめざすなら

源泉所得税の計算や納付書の作成など、店舗運営には見えないバックオフィス業務が山積みです。日本商工会議所の「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」によると、中小企業の63.0%が人手不足に悩んでいます。事務作業の効率化は急務です。
税務などの複雑な業務は税理士に任せ、店舗オペレーションのデジタル化(DX)を進めることが重要です。人的ミスを減らし、本来注力すべき顧客満足度の向上や売上アップにリソースを集中させましょう。
出典:「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」 の集計結果について ~中小企業の約6割が外部シニア人材の受入れに前向き~|日本商工会議所

まとめ:源泉所得税を正しく理解し、飲食店の税務トラブルを防ごう

飲食店を運営する上で、源泉所得税の正しい計算と期限内の納付は避けて通れない重要な義務です。対応を間違えると追徴課税などの重いペナルティが発生する恐れもあるため、今回解説した重要ポイントをしっかり押さえておきましょう。

【この記事の重要ポイント】
・対象の把握: アルバイトを含む従業員への給与や、個人の外注先(デザイナーやカメラマン等)への報酬が対象です。
計算方法の違い: 給与は「源泉徴収税額表」を、個人の外注費は「10.21%」の計算式を用いて正確に算出します。
納付期限の厳守: 原則は支払った翌月10日です。従業員10人未満の店舗は、事務負担を大幅に減らせる「納期の特例(年2回納付)」の申請を検討しましょう。
年末の精算: 従業員には店舗側で年末調整を実施し、外注先は各自で確定申告を行います。

複雑な税務処理はオーナーの負担になりがちです。基本ルールを理解した上で、必要に応じて税理士への依頼やDXツールを活用し、売上アップや店舗運営に集中できる環境を整えていきましょう。

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監修:ダイニー編集チーム
飲食店向けDX・POS・モバイルオーダー領域の情報発信を行うダイニーのコンテンツ編集チーム。
飲食業界のトレンド、店舗運営、インボイス制度などの最新情報を調査・整理し、飲食店経営者や店舗責任者に役立つ情報を発信しています。

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